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インドネシア新投資法の改善点と課題

 

2007年3月29日、国会上程から1年間を経て新たに内外無差別の原則や投資インセンティブ、投資認可のワンドア統合サービス等を規定した新投資法が国会本会議で承認され、2007年4月26日に大統領の承認により発効となった。

 

新投資法は、外資導入促進により国家経済の立て直しを図る政策を採ったメガワティ前政権からの重要な課題の一つであり、ユドヨノ政権下においても同様に外国投資の拡大により雇用の創出と貧困削減を目指しているものである。又、日本との経済連携協定(EPA)交渉を終結させる為にも早期成立が求められていたものである。

 

以下はジャカルタジャパンクラブ調査部会が取りまとめたものを下記する。

 

<具体的な改善ポイント>

  1. 従来の外国投資法(1967年法律第1号、以下旧法という)、内国投資法(1968年法律第6号)、外国投資改正法(1970年法律第11号)、及び内国投資改正法(1970年法律第12号)を一本化した投資に関する初めての統一法となる。

  2. 統一法の成立により「内外無差別の原則」が採用され、いかなる国からであろうとインドネシアで投資活動を実施する投資家全てに対し、同等な待遇が与えられる。(第6条)但し、基本政策上は「国益に留意しつつ」との条件が付く。(第4条)

  3. 新法の規定は、全ての産業分野に対し有効となった。(第2条)但し、投資は直接投資のみでポートフォリオは含まれず、外資及び内資に閉鎖、又は条件付で開放される事業分野の基準・条件、リスト(ネガティブ・リスト)は、別途大統領令で定める(第12条)。又、他の個別法での投資に係わる規定との矛盾をなくすため、投資に直接関連する全ての法規は、新投資法の規定に整合する義務がある。(第39条)

  4. 送金の自由:自由となる分野としては、資本、利益、銀行での金利、配当金、その他収入、資材購入資金、ロイヤリティー、技術供与への代価、知的所有権など権利の使用・借用への代価などを明記。(第8条)

  5. 投資便宜供与(インセンティブ):税及び許認可サービス(土地の権利、入国管理面、物品輸入許可)での便宜を詳細に規定。但し、外国人労働者の利用許可は原案から削除された。
  6.   (1) 財政面(第18条~20条)
        対象: 新規・事業拡張の投資で大量の雇用創出、優先産業分野、インフラ開発、技術移転、先駆産業、辺境地等への投資等の条件を一つ以上満たす企業
        内容:

    課税所得の引き下げ、国内未生産の資本財、機械、設備の関税軽減・免税、原材料、副資材の関税軽減・免税、生産に必要な資本財、機械、設備の輸入に係わるVAT減税・延期、減価償却・減耗償却の加速、土地建物税軽減など。その他、先駆産業への新規投資に対する所得税軽減・免税、既存投資企業の機械や資本財交換に係わる関税軽減・免除などを別途財務大臣令で規定

      (2) 土地の権利
        対象:

    経済競争力強化に関連する長期間の投資、投資回収に時間を要するリスクのある投資、広域の土地を要しない投資などの条件

        内容:

    事前に延長分まで一括で供与し更新も可能。
    事業権(HGU)現行60年から90年
    建設権(HGB)現行50年から80年
    利用権(HP) 現行45年から70年

      (3) 入国管理(第23条)
        対象:

    投資の実現に必要な外国人労働者、機械修理など短期的に必要な外国人労働者、投資を検討するもの

        内容: 2年間の暫定居住許可、2年居住後に暫定から恒久居住許可へ変更、1年暫定居住許可者の12ヶ月数次再入国許可、2年暫定居住許可者の24ヶ月数次再入国許可など(居住許可は投資調整庁の推薦状で入国管理総局が供与する)
      (4) 物品輸入許可(第24条)
        内容: 貿易関連法規に反しない物品、海外からインドネシアに工場移転するための物品、生産に必要な資本財又は原材料等について便宜が供与される。
  7. 資政策実施の調整は、投資調整庁が行うとし大統領の直轄機関として位置づけられ、政権内での政策実施調整が一元化された(第27条)

  8. 投資分野の中央と地方政府の業務分担が規定され、地方政府は中央政府が管轄する業務以外を実施すると明記。中央政府の管轄は環境破壊リスクの高い天然資源関連への投資や、国家規模で優先度の高い産業分野への投資など。詳細な業務分担は政令で規定(第30条)

  9. 外国人の就労面での規制緩和:旧法では義務とされたインドネシア国籍労働者の雇用は、新法では「インドネシア国籍労働者を優先」と柔軟化した。特定の役職と専門職への外国人専門家の起用が権利として規定され、従来の「インドネシア国民によって充足できない場合のみ」との制限が無くなったが、外国人を雇用する企業はインドネシア人労働者に「訓練及び技術移転を行う義務」が追加された(第10条)

  10. 投資家の権利、義務及び責任が新たに規定され、義務の一つとして投資活動の進捗と直面する障害を報告書として作成し、投資調整庁と地方政府へ定期的に提出することとなった。又、企業の社会的責任の実施についても義務化された(第15条、解説)再生不可能な天然資源事業の投資は現場復帰のために段階的な資金の割り当て義務が明記(第17条)

  11. 会社設立は現行法に基づき主管省庁(法務人権省と解釈される)の承認が必要で、事業活動に係わる許可は各主管官庁から取得しなければならないが、この「許可」は一ヶ所で行われる「ワンドア統合サービス」を通じて取得することが明記された(第25条)

  12. 税便宜、サービス便宜、投資関連情報の取得を支援とする「ワンドア統合サービス」を新たに規定。中央及び地方政府から許認可・非許認可の委任又は権限委譲を得た組織/機関が実施するが、投資調整庁がその一つの機関とされ、又調整も行う(第26条、第28条)

  13. 投資調整庁の任務と機能について明記された(第28条)
    -投資政策の実施と調整、
    -投資政策の検証・提案
    -投資活動の基準と手続の策定
    -投資マップの策定
    -投資プロモーション
    -投資家が抱える障害の解決支援など

  14. 政府による零細・中小企業及び協同組合の振興が規定され、特別に留保された事業分野や中小企業等との協力を条件に、大企業に解放された事業分野を政府が定めると新たに規定(第13条)

  15. 経済特別区(SEZ)について規定を設け、中央政府が独自の投資政策を別の法律で定めると明記(第31条)

  16. 政府と投資家の間の紛争解決手段として、先ず両者が話し合い、合意が得られなかった場合に仲裁、その他の解決方法、裁判を明記。特に、外国投資家の場合は、政府との合意の上で国際仲裁機関を通じた紛争解決が規定された(第32条)

  17. 制裁の章が設けられ、他人名義の会社設立の禁止と法的無効の明記、政府との契約に基づく投資で国益を害する税犯罪、企業犯罪をした場合の契約停止が規定(第33条)

<課題>
  1. 旧法で規定されていた投資調整庁(BKPM)が発給してきた恒久的営業許可書(IUT)による事業活動の有効期間()30年間)や、外資100%出資の場合の地場企業・個人への資本移譲期限(事業開始より15年以内)に関しては新法では見当たらない。
    注)投資活動の終了までその安定を保証することが新法では規定されたことから、上述の「事業活動にかかわる有効期間」や「資本移譲の期限付き義務」は廃止されたものと理解される。

  2. 許認可サービスへの便宜が供与される前提条件として、第18条に規定された投資ではなく全ての投資が対象となるか不明。又、第18条(3)の各条件の詳細がどのように提示されるか不明

  3. 物品輸入許可の便宜について具体的な措置が不明

  4. 投資家の義務とされた「企業の社会的責任の実施」は、内容が広範で実施すべき範囲を明確にする必要がある。(解説では「調和的で均衡が取れていて、環境、価値、規範、地元文化に適合した関係を構築するために各投資会社が負う責任」とある)